事例:株式会社奥村組
Revit Structure&Navisworksで創る 3次元配筋モデルを活用し 鉄道高架橋の配筋工事を効率化

大阪市に本社を置く(株)奥村組は、関西を代表する総合建設会社の1社です。特に道路や鉄道、上・下水道工事などの施工に豊富な実績を持つ同社では、2009年より大手建設コンサルタント会社とともに、鉄道工事における3次元モデルの活用研究を推進しています。2009年10月には「Autodesk Revit Structure」を導入し、実現場での3次元配筋モデルのテスト運用を開始しました。3次元化を核に品質向上とコスト縮減を進める同社の戦略について、情報システム部の五十嵐善一氏と平井崇氏にお話を伺いました。
高難度の配筋工事の品質向上に3次元を活かす
公共事業削減の流れが強まる中、厳しい状況が続く土木業界では、業務効率化によるコスト縮減や工期短縮、品質向上などが重要な課題となっています。それは関西屈指の総合建設会社、奥村組にとっても同様でした。
「たとえば当社の得意分野の一つである鉄道工事で、近年の大きな話題となっているのが高架橋構造物における配筋の問題です」。
同社情報システム部の五十嵐善一氏によれば、こうした構造物では近年、耐震性を高めるためより多くの鉄筋が使われるようになり、同時に景観への配慮などから構造物自体のデザインも凝った複雑なものが増えていると言います。そのため配筋工事の難度が高まり、設計図面通りの配筋が難しくなって手間と時間がかかってきています。
「時には図面通りに配筋できず、施工途中で組み直しになるケースさえ発生しています。こうした手戻りをなくし品質向上を図るため、3次元で何かできないかと考えたのが全ての出発点でした」。
こうして五十嵐氏たちは、鉄道工事分野で3次元モデルによる設計の可能性を検討していた、ジェイアール東日本コンサルタンツと八千代エンジニヤリングの共同研究に加わり、3次元配筋支援システムの開発に着手したのでした。実は奥村組と八千代エンジニヤリングは、共に「AutoCAD Civil 3D」ユーザ会幹事を務める旧知の仲。それだけに3社とも、スムーズに密な協力が可能になったのでした。
「システ厶のベースはAutodesk Revit Structure(以下Revit Structure)と、施工シミュレーションのAutodesk Navisworks(以下Navisworks)。定期的に3社で会合を開き、このシステ厶を念頭に“3次元モデルで配筋設計を行う上で必要な機能”を議論しました。そして要望を取りまとめ、オートデスクに提案していったのです」。
議論の場では“施工現場の問題”として、図面確認や施工確認のための写真撮影や頻繁な設計変更への対応にも、膨大な時間と手間がかかる点などが俎上に上りました。そして、その解決には、配筋の干渉状況を全数チェックできる3次元配筋支援システムが必要だと判明したのでした。
Revit Structure+Navisworksの3次元配筋支援システム
「そんなシステ厶ができれば、配筋を事前チェックして現場のクレームを減らせるし、発注者へ設計変更の内容もビジュアルに分かりやすく説明できます。また変更に伴う鉄筋の必要量も事前に分かるので加工余りも減る。検査位置など事前に検討しておけば、検査自体もスムーズに進むでしょう」。
そんな理想のシステ厶を求め、3社は次々オートデスクへ要望を出していきました。その結果それらは、全てでこそないが、配筋の干渉チェック等の新機能を含めかなりの所まで、Revit Structureのバージョンアップへ反映されていきました。 こうして共同研究は一定の成果をあげました。
ですが、でき上がった配筋モデルが現場でどれだけ効果を発揮できるかは、実際に使ってみなければ分かりません。Revit Structureをさらに進化させるためにも、実現場でのテスト運用が必要でした。そこで同社は、すでに進行していたある鉄道高架橋の建設工事に、Revit Structureによる3次元配筋支援システムの適用を決めたのでした。
テスト運用が始まったのは2009年春。まず施工現場から平面図・断面図・配筋図等の図面をもらい受け、Revit Structureにより3次元配筋モデルを作成。この配筋モデルを使ってNavisworksで干渉チェックと鉄筋間隔の寸法チェックを行っていきました(その後、Revit Structureに配筋干渉チェック機能が付加されたため、現在ではこの新機能を利用しています)。
「当然ですが、Revit Structureの3次元配筋モデルは“実物の配筋のでき上がり”そのままというか、図面と写真が一体化した感じで、とにかく非常に分かりやすかったです。干渉チェックもスムーズで、テスト運用でしたが、実際に効果が出たという報告も受けました」。
このテスト運用を実施した現場では、平面図や配筋図、3次元配筋モデルを元に、現場担当者を交え活発な意見交換が行われ、その結果もオートデスクにフィードバックされました。いわば奥村組の“現場のナレッジ”が、Revit Structureに埋め込まれていったのです。
困難な時代だからこそ3次元を積極的に活用したい
「現場担当者や鉄筋作業員も、施工前にこれほど明確に配筋の様子をイメージしたことはなかったはずです」。今回のRevit Structureによる3次元配筋モデルのテスト運用について、同じく情報システム部の平井崇氏はこう語っています。
「誰もが“こんな3次元モデルで工事着手前から配筋を検討したかった”と驚いていましたね。モデルを見て改めて鉄筋の過密さを痛感した方も多く、3次元で見て初めて気付くことも少なくなかったようです」(平井氏)。
たとえば従来の2次元配筋図(断面図)では、鉄筋間隔も平面的に確認するしかありません。しかし、今回は3次元配筋モデルで確認することで、ある部位の間隔が狭すぎ、設計上のコンクリート配合では品質の良いコンクリートが打設できないと判明。そこで発注者と協議し、コンクリートの流動性を上げるよう設計変更できました。そのまま施工を進めていたら最悪の場合手直しで、大きく無駄が出る可能性もあったといいます。まさにコンクリート構造物の品質確保にも有効な手法といえます。
「紙の図面は鉄筋も単線なので見つけにくいのですが、3次元配筋モデルは鉄筋の太さを考慮して表現できるので一目瞭然です」(平井氏)。
他にも、梁と柱と杭頭部等の配筋の交差部で、鉄筋の挿入が難しい箇所が判明するなど、干渉チェックは威力を発揮しました。以前は問題が発覚するのは施工開始後で迅速な現場対応が必要でしたが、事前に分かれば対策も立てられます。また、作業前の打合せでは、配筋手順や注意箇所の説明、新人教育等にも活用できます。
「紙の図面より格段に分かりやすいし、角度を変えて見せられるので設計者や発注者、近隣住民への説明ツールとしても有効です。図面では理解してもらえない設計意図も、3次元配筋モデルなら容易に伝えられるのです。現場担当者にとって非常に役立つのは間違いありません」(平井氏)。
今後はこうした事例を積み重ね、活用ノウハウとして蓄積していく必要があります。そこで2010年は新現場に工事開始前からこれを導入し、効果を確認していく計画とのこと。
「これに合せ、社内で迅速に3次元配筋モデルを作る体制を整えたい。Revit Structureを使いこなす人材教育も、オートデスクの協力を得ながら進めます。BIMと言うとちょっと大げさですが、土木の世界でも3Dのメリットは既に明らか。困難な時代だからこそ積極的に活用したいですね」(五十嵐氏)。
ギャラリー
会社プロフィール
株式会社奥村組
本 社:大阪市阿倍野区松崎町2-2-2
代表取締役社長:奥村太加典
設 立:1907年2月22日
資本金: 198 億円
従業員数: 2,104名(2009年4月1日現在)
事業概要:総合建設業およびこれに関連する業務
【導入製品/ソリューション】
Autodesk Revit Structure
Autodesk Navisworks
【導入目的】
3次元配筋支援システムの共同開発
高難度の配筋工事の作業効率化、品質向上
土木業界3次元化への対応
【導入ポイント】
機能追加等、要望に対する対応の的確さ
メインシステム(AutoCAD)との親和性
トレーニングなどサポートサービスの充実/p>
【導入効果】
3次元配筋支援システムの稼働
高難度の配筋工事の効率化、品質向上
発注元・協力業者とのコミュニケーション強化
【今後の展開】
3次元配筋支援システムのブラッシュアップ
3次元の現場活用事例を増やしノウハウを蓄積
3次元配筋モデル制作の社内体制整備









